人権に対する取り組み

クレハグループは、さまざまな国や地域で企業活動を展開していることから、国際基準に則った人権に対する配慮はサステナビリティ経営における重点課題のひとつであると考えています。「クレハグループ企業行動憲章」に「私達は、企業活動に関わるすべての人々の人権を尊重します」を掲げ、あらゆる場面で、すべてのステークホルダーの人権を尊重した企業活動を行っています。

人権方針

クレハグループは、2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際スタンダードや外部有識者からのご意見をもとに、グループ人権方針を2023年4月1日に制定しました。
この方針に基づき、クレハグループは人権デュー・ディリジェンスを確実に実施し、自らの企業活動や取引関係を通じたすべてのステークホルダーの人権を尊重するための取り組みを推進していきます。

クレハグループ人権方針

クレハグループは、企業理念の一つに「人と自然を大切にします」を掲げ、自らの企業活動や取引関係において人権尊重に取り組んでいます。
人権尊重の取り組みをグループ全体で、より一層推進するために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、「指導原則」という)に基づく「クレハグループ人権方針」を株式会社クレハの取締役会の承認を経て制定しました。
この方針に基づき、ステークホルダーと連携し、協力しながら、国際的に認められた人権の尊重を推進します。


1.基本的な考え方
クレハグループは、企業活動が直接または間接的に人権に対して影響を与える可能性があることを理解しています。私たちは国連「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」をはじめ、国際的に認められた人権を尊重します。

  • * 中核的労働基準の「結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認」、「あらゆる形態の強制労働の禁止」、「児童労働の実効的な廃止」、「雇用及び職業における差別の排除」、「安全で健康的な労働環境」を含みます

2.適用範囲
本方針は、クレハグループで働くすべての役員および従業員に適用します。
私たちは、バリューチェーン上の取引先を含む全てのビジネスパートナーの皆さまが本方針を理解し、支持し、人権を尊重することを期待します。

3.人権尊重の責任
クレハグループは、自らの企業活動や取引関係において人権への負の影響に関与することを避け、「指導原則」に沿って、自らが引き起こした、あるいは助長したと認識する人権への負の影響を是正するための適切な措置をとることにより、人権を尊重する責任を果たし、責任あるバリューチェーンを構築していきます。

4.企業活動を通じた人権尊重
クレハグループは、以下をはじめとする人権課題に取り組みます。


  • 結社の自由や団体交渉権など、労働者の基本的権利を尊重します
  • 労働安全衛生の改善・向上を進め、安全を確保します
  • 事業を行う各国・地域の法令を遵守したうえで、従業員の労働時間を適切に管理し、適正な賃金と手当を提供します
  • あらゆる差別・ハラスメントを禁止します
  • 児童労働、不当な低賃金労働、および強制労働、人身売買、18歳未満の労働者(若年労働者)の夜間・時間外労働、健康や安全に危険を及ぼす業務への就労を含む現代奴隷を禁止します
  • プライバシーを尊重し、個人情報は関係法令を遵守し適切に取り扱います
  • 安全や健康を含む地域社会の人権を尊重します

私たちは、人権への負の影響のうち、最も深刻なもの、あるいは対応が遅れると修復不可能になってしまうものについては、優先的に予防と軽減を図ります。

5.教育
クレハグループは、本方針がすべての企業活動に組み込まれ、効果的に定着するよう、全ての役員および従業員に対して教育を実施します。

6.人権デュー・ディリジェンス
クレハグループは、「指導原則」に基づき、人権デュー・ディリジェンスの体制を整備し、企業活動や取引関係を通じて与えうる人権への負の影響を特定し、その予防および軽減の継続的なプロセスを構築していきます。

7.是正・救済
クレハグループは、自らの企業活動や取引関係において人権への負の影響を引き起こした、または助長したことを確認した場合、正当なプロセスを通じて是正・救済に取り組みます。
バリューチェーンにおいて、取引関係により私たちの事業、製品、サービスに直接関連する人権への負の影響を確認した場合には、ビジネスパートナーの皆さまと協働してその防止または軽減に努めます。
私たちの企業活動や取引関係において人権への負の影響を受ける可能性のある個人とコミュニティのために、実効性のある苦情処理メカニズムを提供します。

8.ステークホルダーとの対話
クレハグループは、本方針を実行するため、お客様や取引先などのビジネスパートナー、株主・投資家、従業員、社内外の専門家、地域社会、私たちの企業活動によって影響を受ける可能性がある権利保有者等のステークホルダーと真摯に対話・協議していきます。

9.情報開示
クレハグループは、本方針に基づく人権尊重の取り組み状況を、ウェブサイト等を通じて情報開示します。

10.適用法令
クレハグループは、企業活動を行う国や地域で適用される法令を遵守します。
各国・地域の法令が国際規範と異なる場合は、各国・地域の法令を遵守しながら、国際的な人権基準を尊重する方法を追求します。

制定 2023年4月1日

株式会社クレハ 代表取締役社長

小林 豊

目標 / あるべき姿

  • クレハグループ倫理憲章に則り、グループ全体で遵守する。

2022年度計画

  • 入社時のコンプライアンス教育の実施

2022年度報告・成果

  • 新入社員に、人権尊重を含むコンプライアンス教育を実施し、クレハのコンプライアンス体制や人権尊重の考え方への理解を促進した。(受講者数:65名 カバー範囲:中途入社を含む、すべてのクレハ新入社員 カバー率:100%)
  • クレハ従業員を対象としたCSR説明会においてビジネスと人権について説明し、人権尊重の考え方への理解を促進した。(受講者数 1008名 カバー範囲:クレハ従業員 カバー率:60%)

マネジメント体制

「クレハグループ人権方針」に基づき、2023年4月に新たに設置したサステナビリティ推進委員会の下部組織として、人権部会を設置しました。サステナビリティ推進委員会は、取締役または執行役員が委員長を務めます。人権部会には、社内の人権に関連する部署が参加し、人権デュー・ディリジェンスを含む人権尊重の取り組みを統括するとともに、年度計画の策定および進捗管理を行うこととしています。進捗および成果については、サステナビリティ推進委員会に報告され、経営層による適切な監督を受けています。

人権デュー・ディリジェンス

人権デュー・ディリジェンスとは、企業が自社・グループ会社およびサプライヤーなどにおける人権への負の影響を特定・防止・軽減したうえで、取り組みの実効性を評価し、対処方法について説明・情報開示していく一連の行為です。

企業の人権取り組みの全体像

企業の人権取り組みの全体像
  • * 経団連「人権を尊重する経営のためのハンドブック」の図をクレハにて改変

2022年度は、政府や国際団体などの資料を参照しながら、クレハグループの事業活動を取り巻く人権への負の影響の可能性(人権リスク)について分析を行い、重要な人権課題を抽出しました。さらに、クレハグループの人権に関する現状や既存の取り組みを把握するため、クレハを含むグループ全体(連結子会社28社)を対象に、国際的な人権基準に沿ったアンケートを実施しました。
また、クレハは取引先に対して、「人権・労働」を含むCSRの理解とCSRに関連するリスク把握を目的に、2017年から継続してアンケート調査を実施しています。この調査を通して、サプライチェーンにおける人権リスクの把握に努めるとともに、リスク低減に向けて、取引先とのコミュニケーションを継続しています。

2023年度からは、新たに策定したクレハグループ人権方針に基づき整備した体制のもとで、人権デュー・ディリジェンスのプロセスに沿って本格的に活動を進めていきます。

教育

クレハグループでは、「コンプライアンス行動基準解説書」を作成し、コンプライアンス違反や人権侵害につながる具体的な事例を挙げながら、グループ全体の理解深化を図っています。また、eラーニングも積極的に活用し、国際的な人権の概念を含め、人権に関連する理解を深めています。

担当者教育と専門家との意見交換

人権尊重の取り組みをより実効性のあるものとするため、人権担当者教育として、2022年度は以下の研修を受講するとともに、専門家と人権方針案などの意見交換を行いました。
・研修受講
 UNDP主催「ビジネスと人権/人権デュー・ディリジェンス研修」
・外部専門家との意見交換
 UNDP主催 国内外の専門家との「個別ガイダンスセッション」

従業員教育

クレハグループ人権方針がすべての企業活動に組み込まれ、効果的に定着することを目指して、人権に関する従業員教育をクレハグループ全体に拡大していきます。

苦情処理システム

クレハグループでは、従業員がコンプライアンスに関して問題のある行為を知ったとき、疑義を生じたとき、判断に迷うときに報告や相談をするための相談窓口(ホットライン)を設けています。人権に関する事項もこのホットラインの対象です。また、ホットラインの利用を促進するため、弁護士が対応する社外相談窓口や、女性相談員が対応するハラスメント専用窓口を設置しています。なお、ホットラインに報告や相談をしたことを理由に、相談者に対して不利益な取り扱いをすることは、規程で禁止しています。
2022年度は、クレハグループの事業継続に関わる重大な人権への負の影響や差別に関して、上記のホットラインを通じて確認された事例はありませんでした。
また、ホットラインを経由しない人権問題に関しても、重大な人権への負の影響として確認された事例はありませんでした。

その他の取り組み

「責任ある調達」による人権の尊重

クレハは、原材料の調達において人権侵害や紛争に加担しないため、取引先と協力して、責任ある鉱物調達や高リスク地域からの調達調査を実施しています。

責任ある鉱物調達

コンゴ民主共和国および周辺諸国において紛争鉱物(金、スズ、タンタル、タングステン)が武装勢力の資金源となり、紛争や人権侵害を助長したり、環境破壊などを引き起こしたりしていることが国際的な問題となっています。また、コンゴ民主共和国で産出されるコバルトについても同様の問題が指摘されており、インドやマダガスカルにおけるマイカ(雲母)採掘の児童労働関与も、新たに対応が求められるようになっています。
クレハは、コバルトとマイカなどを含めこれらの鉱物問題を人権に関わる重要課題と認識し、「Responsible Minerals Initiative (RMI)」の認証をもたない製錬業者、精製業者、加工業者が製造した対象鉱物を用いた原材料を使用しないよう、調査や取引先との情報共有を行っています。
サプライチェーンを遡った調査の結果、2022年度は、クレハが製造販売している製品についてRMI非認証の業者を経由した対象鉱物の使用は確認されませんでした。

  • * Responsible Minerals Initiative (RMI):世界で400以上の企業や団体が加盟する、責任ある鉱物調達に関する取り組みを主導している団体

強制労働防止

米国では、新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働で生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、同自治区が関与する産品輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」が2022年6月21日に施行されました。
クレハは、紛争鉱物問題同様、人権に関わる重要課題と認識し、クレハが製造販売している製品に新疆ウイグル自治区の関与がないことを示すため、調査や取引先との情報共有を行っています。
調査の結果、2022年度は新疆ウイグル自治区での製造や原料調達が行われたと懸念される製品は確認されませんでした。