労働安全衛生

「安全」は製造業にとって最も重要な基盤です。クレハでは、人身事故の発生ゼロを目指して、法令に定められた衛生委員会、安全衛生委員会や各事業所主管部門のもと、職場巡視、内部監査といった取り組みを行い、安全活動(5S活動、指差し呼称運動、危険予知活動、リスクアセスメントなど)の展開を図っています。また、それを支える“人”の教育にも力を入れています。さらに、グループ各社とは「クレハグループRC協議会」を通じて、労働安全衛生の情報共有を行っています。

目標 / あるべき姿

  • 重大人身事故をゼロにする。

2022年度計画

  • 事故原因究明能力の維持と向上
  • 技能研修センターの機能強化と研修対象者の拡大による事故の未然防止
  • グループ各社の活動の相互確認・連携強化による安全レベルの向上

2022年度報告・成果

  • 休業災害6件、不休災害13件(2事業所および各事業所内グループ会社を含む)
  • 事故原因究明力および展開力の向上を目的に、管理者ならびに職長まで対象を拡大した「なぜなぜ分析研修会」を実施
  • 事業所長パトロール(2事業所合計18回実施) を活用した徹底的な現場確認と、是正方針の確認を実施
  • 「定修安全会議」での定期修理重点項目の周知徹底
  • 協力会社の監督者を対象とした安全教育は完了し、対象を従業員へ拡大しての安全教育を実施

労働安全衛生マネジメントシステム

クレハおよびグループ各社は、事業活動に即した労働安全衛生マネジメントシステムの導入を積極的に推進し、働くすべての人たちの安全と健康を優先させ、「労働災害ゼロ」を目指した安全衛生活動を行っています。

労働安全衛生の取り組み

クレハグループでは、「安全はすべてに優先する」をモットーに、すべての事業所で人身災害ゼロと設備事故ゼロを目指しています。そのために、一人ひとりの従業員が常に「絶対に事故を起こさない」「元気で家に帰る」という意識をもち、「省略行動を撲滅」し「決められたルール、約束をきちんと守る」という基本を徹底しています。また、「安全」を継続していくために、設備や機器の更新といった取り組みと同時にグループ各社と共同で安全推進活動を実施し、事故発生時における緊急連絡などの一元的な管理体制を構築するなど、互いに協力して取り組んでいます。これらの取り組みを通じて、グループ全体における安全体制の強化を推進していきます。

労働安全衛生の取り組み

安全衛生委員会・衛生委員会

クレハでは、労働安全衛生法に基づき各事業所に安全衛生委員会、本社には衛生委員会を設置し、労使が一体となって、各事業所の課題に応じた取り組みを推進しています。毎月1回開催される各委員会の議事録を社内のオンライン情報システムに掲載し、健康管理、感染症対策、職場環境の改善、事故防止などの報告内容について従業員に共有しています。また事故事例の情報については、メールや社内のオンライン情報システムによるいち早い共有やデータベースを活用した詳細情報の共有など、再発防止のための周知徹底に取り組んでいます。

労働安全衛生の啓発活動

毎年7月の全国安全週間に合わせて、いわき事業所では事業所幹部によるパトロールや安全大会を実施し、安全対策の状況確認や意識向上を図っています。
2022年7月には、生産・技術本部長兼いわき事業所長および事業所幹部による安全パトロールを実施し、各部署の安全対策を確認するとともに、「安全大会」を開催し、人身事故ゼロ、設備事故ゼロの職場を表彰しました。また、外部から講師を招いて安全講演「目指せ!安全第一の職場づくり~災害とエラー防止のために実践する事~」を実施し、樹脂加工事業所の茨城・柏原両地区にもオンラインで同時配信しました。
2023年1月にはいわき事業所で、2月には新たに樹脂加工事業所で、事故原因追究能力の維持と向上を目的とした外部講師による「なぜなぜ分析」研修を実施しました(対象者:いわき事業所は管理者と現場監督者、樹脂加工事業所は管理者)。両事業所ともに「なぜなぜ分析」の基本を体系的に学ぶ基本編と、過去に発生した事故やトラブルを題材に「なぜなぜ分析」を行い、問題の要因を論理的に掘り下げる実践編の2部構成の研修を通し、分析力のさらなる向上を図りました。
各事業所では、毎年10月に行われる全国労働衛生週間に合わせて、衛生管理や健康に関する活動や講演会などを実施しています。いわき事業所では2022年10月に外部講師を招いて安全衛生特別講演「口から健康長寿を考える~口腔ケアで生活習慣病 認知症予防~」を実施しました。樹脂加工事業所の茨城・柏原両地区では、2022年10月に労働衛生特別講演「ストレス関連疾患の予防」を、録画配信により実施しました。

  • いわき事業所で開催された「なぜなぜ分析」研修
  • いわき事業所で開催された「なぜなぜ分析」研修

いわき事業所で開催された「なぜなぜ分析」研修

職場における化学物質リスクアセスメント

2022年安全規則などの改正により、2023年度より化学物質のSDS(Safety Data Sheet)*1やラベルによる情報伝達、リスクアセスメントと作業者へのばく露防止対策などが自律的な管理に移行されます。また、がん原性物質数も大幅に増え、作業記録なども必要です。
これらの改正に対応するため、改正内容に関する教育をクレハグループ内で実施しました。クレハグループでは引き続き化学物質を使用する全部署においてさまざまな取り組みを行います。リスクアセスメント評価ツールとして、以前より使用していた「BIGDr.Worker*2」に加え新たに「CREATE-SIMPLE*3」を導入し、危険性と有害性両面でリスクアセスメントを強化しました。リスクが高いと判定された作業については、化学物質管理者および保護具着用管理責任者が主導しリスク低減措置を講じています。
2022年度は、特定された化学物質による疾病、体調不良者の発生事例はありませんでした。

  • *1 化学物質の危険有害性情報を記載した文書
  • *2 日本化学工業協会(日化協)が開発した、安衛法に基づくリスクアセスメントの実施に活用できる、作業者リスクアセスメント支援ツール
  • *3 厚生労働省が開発した、あらゆる業種に向けた簡単な化学物質リスクアセスメントツール

技能研修センター

いわき事業所では、クレハ従業員およびグループ会社従業員の保安防災・労働安全衛生の意識向上に努め、一丸となって労働災害・事故の撲滅に取り組んでいます。取り組みの一環として、2005年11月に技能研修センターを開所し、作業中に発生する危険を疑似体感することによって、安全感性を高め安全を意識した作業を習得する講習を実施しています。開所以来、2023年3月までに、のべ約4万5千名の受講者を受け入れました。
2022年度は、いわき事業所内の工事における事故ゼロに向けた取り組みとして、いわき事業所に入構する工事協力会社従業員を対象とした安全講習を実施し、2023年3月末までに約310名が受講しました。

技能研修センター
技能研修センター

技能研修センターのプログラム

安全体感プログラム


  • 服装観察
  • 高所危険体感
  • 回転体危険体感
  • 玉掛け作業危険体感
  • 火災爆発の怖さ体感
    (可燃性液体火災・粉じん爆発)
  • 電気危険体感
    (電気火災・感電)
  • 応急手当体感
  • 救急救命体感
    (心肺蘇生・AED)
  • 危険予知訓練(ショートタイム危険予知トレーニング)
  • 指差呼称体感
  • スチームトラップ危険体感
  • 被液危険体感
  • 減圧・液封じ危険体感

労働安全衛生法改正への対応

労働安全衛生法の改正により、高所作業では要求性能を満たした墜落制止用器具の使用が義務づけられ、フルハーネス型墜落制止用器具を使用する作業者には、特別教育(法定時間:学科4.5時間、実技1.5時間)も必須となりました。技能研修センターでは研修ツールや関連する設備を整備し、2019年10月より特別講習を実施しています。受講者数は、2023年3月末までにのべ約640名となりました。

物流事故の撲滅対策

クレハは、製品に関わる貨物輸送の際に発生する物流事故の撲滅に取り組んでいます。
いわき事業所から出荷される製品については、輸送を担うクレハ運輸と社内関係部署が協働で事故の発生防止に取り組んでいます。クレハ運輸の輸送協力会社を含めた乗務員に対する継続的な安全教育、車両の下回り点検の強化などにより、重大事故につながる可能性がある漏えいなどの事故の防止はもとより、誤納入やその他あらゆる物流事故の撲滅を進めています。 樹脂加工事業所から出荷される「NEWクレラップ」などの包装材家庭用品についても、輸送協力会社への徹底した安全教育の実施や、事故要因分析の結果を教育計画に反映するなど継続して対策を実施し、物流事故の削減に取り組んでいます。

■物流事故件数

物流事故件数

「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言

クレハは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が提唱する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同し、2019年9月18日「ホワイト物流」推進運動事務局に自主行動宣言を提出しています。「ホワイト物流」推進運動とは、深刻化が続くトラックの運転者不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的にしている運動です。

当社が、自主行動宣言の中で表明している取り組みは、下記の通りです。

  1. 物流の改善提案と協力
  2. 荷主側の施設面の改善
  3. 高速道路の利用
  4. 船舶や鉄道へのモーダルシフト
  5. 運賃と料金の別建て契約
輸送における船舶の利用
輸送における船舶の利用

「ホワイト物流」推進運動をCSR活動の一環と位置づけて、グループ各社とともに自主行動宣言の実現に向けて取り組んでいきます。また、この取り組みを推進することによって、2024年4月から始まる自動車運転者の年間時間外労働時間上限960時間の法律による規制(2024年問題)にも対応していきます。

KUREHA RC TOPICS

クレハ建設正木瑞弘の労働安全衛生への取り組みが評価

中央労働災害防止協会「緑十字賞」受賞

2022年10月19日、マリンメッセ福岡で開かれた「第81回 全国産業安全衛生大会」において、クレハ建設の正木瑞弘(執行役員 安全衛生統括部長)が中央労働災害防止協会「緑十字賞」の表彰を受けました。この賞は、長年にわたり産業安全または労働衛生の推進向上に尽くし顕著な功績が認められた個人・職域グループを、中央労働災害防止協会が全国の全産業から選び表彰するものです。
正木執行役員は現場の安全衛生管理担当を皮切りに、断続的にのべ34年にわたり労働安全衛生管理業務に従事し、現在はクレハ建設にて安全衛生統括部長・総括安全衛生管理者を務めています。また、いわき労働基準協会においても2017年から理事・監事を歴任するなど、地域の労働安全衛生活動の推進にも参画してきました。
その間に、今では当たり前となっている、全員参加の作業安全確認、配置図に作業内容を明示することによる作業内容の見える化、管理者による現場パトロール、作業者と管理者とのコミュニケーション向上、二次検診の受診推進などを通じた健康管理の実効性向上などを早くから提言、推進してきたことが評価されました。
このような長年にわたる地道な活動が顕彰されたことは、クレハグループの誇りであり、全従業員の励みでもあります。
クレハグループは、どのような状況でも「安全第一」の信念に基づき安全管理を徹底することが極めて重要と考え、これからもこの信念のもと安全衛生管理に努めていきます。

  • 第81回 全国産業安全衛生大会 in 福岡
  • 第81回 全国産業安全衛生大会 in 福岡

第81回 全国産業安全衛生大会 in 福岡