保安防災

クレハグループは、化学関連企業として、危険物・高圧ガス・毒劇物などを日常的に取り扱っています。保安防災、重大設備事故ゼロは当社グループの最も重要な責務であり、設備および運転管理を徹底して行っています。また、地域の安全・安心、そして信頼維持を目指し、各種法令の遵守にとどまらず、自主的な管理基準の設定や設備の予防保全にも積極的に取り組んでいます。

目標 / あるべき姿

  • 重大設備事故をゼロにする。

2022年度計画

  • グループ各社を含む各設備の安定・安全操業の継続
  • さまざまなケースを想定した訓練による緊急対応能力の向上、技能伝承、人財育成推進
  • 事故対策の確実な実行と維持管理の確認

2022年度報告・成果

  • 重大設備事故1件・軽微設備事故9件
  • 総合防災訓練、社長保安査察、本部長保安査察、防災強化訓練(日中、夜間)、各部個別訓練などを実施
  • 実作業時の危険予知、間接部門・研究所のリスクアセスメントをテーマに活動を実施

事業所の保安防災

緊急事態発生時において、各従業員が与えられた役割を迅速かつ的確に遂行するため、事業所ごとの状況に応じ、実践に即した訓練を実施しています。

いわき事業所における保安防災

いわき事業所では、毎年、大規模災害や事故を想定した総合防災訓練を事業所全体で実施しています。
2022年12月2日に、「福島県いわき沖を震源とする震度5強の地震が発生し、ヘキサンタンクヤードの配管に亀裂が入り漏えいが発生、さらに漏えい処置中に余震が発生し、破損した電気ケーブルよりヘキサンに着火し火災発生」との想定のもと、東日本大震災の教訓を反映させた訓練を実施し、自衛防災組織の点検と指揮者および各隊の役割を確認しました。2022年度は、いわき市勿来消防署をはじめ、いわき市消防団第三支団、いわき市勿来支所、いわき市南警察署の関係者に参加いただくとともに、グループ会社を含む従業員約1,450名が参加しました。訓練後、勿来消防署副署長から「正確な情報伝達、的確な小隊間の連携が行われており、すべての訓練において災害実態に即した適切な処置が行われていました。今後もあらゆる災害を想定し、迅速・的確に対応できるように訓練を実施していただきたい」と講評をいただきました。

  • 総合防災訓練(いわき事業所)
  • 総合防災訓練(いわき事業所)
  • 総合防災訓練(いわき事業所)
  • 総合防災訓練(いわき事業所)

総合防災訓練(いわき事業所)

また、総合防災訓練に加えて、製造部での発災時における初期連絡などの初動活動や常備防災隊(保安課)誘導訓練、製造部の各設備や取り扱い物質に応じた常備防災隊の鎮圧活動能力の向上を目的とした各部個別の訓練、製造部と常備防災隊の合同訓練なども継続的に実施しています。
さらに、いわき事業所では2006年に発生したPPS(ポリフェニレンサルファイド)プラントの火災事故を風化させないため、発生日である9月7日を「防災の日」に定め、毎年、この時期に合わせて防災訓練を兼ねた社長保安査察を実施しています。

  • 社長保安査察(いわき事業所)
  • 社長保安査察(いわき事業所)

社長保安査察(いわき事業所)

樹脂加工事業所における保安防災

樹脂加工事業所は、柏原地区で2022年10月14日に生産・技術本部長出席のもと、茨城地区では2022年11月4日に社長出席のもと、総合防災訓練を行いました。
茨城地区、柏原地区ともに、休日の日中に火災が発生したと想定し、休日の限られた人員で安全かつ迅速に被害を最小限にするため、初期対応として大型消火器を導入するなど工夫しながら訓練を行いました。さまざまな状況を想定した訓練を通して対応能力を身に付けるとともに、従業員の安全を守りながら減災を行うことができるかを改めて確認し、防災意識と対応能力の向上を図りました。

  • 生産・技術本部長保安査察(樹脂加工事業所柏原地区)
  • 生産・技術本部長保安査察(樹脂加工事業所柏原地区)

生産・技術本部長保安査察
(樹脂加工事業所柏原地区)

  • 社長保安査察(樹脂加工事業所茨城地区)
  • 社長保安査察(樹脂加工事業所茨城地区)
  • 社長保安査察(樹脂加工事業所茨城地区)

社長保安査察
(樹脂加工事業所茨城地区)

物流の保安防災

クレハは、物流に関わるグループ各社と協働で、貨物輸送時の保安防災に向けて訓練や教育を実施し、手順書や連絡体制の確認・徹底に取り組んでいます。
化学品の輸送を行うクレハ運輸では、毎月開催している乗務員向けの安全会議で、発生した物流事故に基づく注意喚起や取引先設備の変更点の周知のほか、実車両や薬品を使った体験型訓練を実施し、乗務員の安全意識の向上と事故の撲滅を図っています。

  • 正常と異常の違い体感訓練
    正常と異常の違い体感訓練
  • 乗務員少人数方式指導
    乗務員少人数方式指導
  • 納入訓練
    納入訓練

また、危険物原料の主要基地である小名浜移送所においても、高圧ガスの漏えいや火災発生時に迅速な初期消火活動ができるように、2022年9月29日にタンクへの散水訓練、2022年11月29日に移送所内放水訓練を実施しました。

  • 高圧ガスタンクへの散水
    高圧ガスタンクへの散水
  • 放水訓練
    放水訓練
  • 放水訓練
    放水訓練

設備事故の未然防止

クレハでは、いわき事業所、樹脂加工事業所ともに、重大設備事故ゼロの継続を目標に、事故削減に向けたさまざまな取り組み、保安防災力の強化および自然災害に備えた対策を推進し、安定操業の確保を図っています。
いわき事業所では2022年度に、設備破損により可燃性ガスが漏えいする重大設備事故が1件(2021年度:1件)、軽微な事故が6件(2021年度:18件)発生しました。事故の傾向をみると、従業員および協力会社のヒューマンエラーに起因する事故が5件、設備の不良や劣化による事故が2件で、発生した事故の大半がヒューマンエラーによる事故でした。近年発生した設備事故の原因解析においても、確認ミス、誤操作、誤判断といったヒューマンエラーによるものが多くを占め、次いで設備管理不良による事故が多いという結果でした。
これまでに取り組みを強化してきたプラント監査、静機器点検などにより、2021年度に対し設備事故の発生件数は大きく減少しましたが、さらに保全レベルの把握手法(MOSMS:経営に資する戦略的保全マネジメントシステム)の導入、事例のデータベース化による再発防止策の徹底と設計への反映などの取り組みを進め、設備事故の未然防止ならびに重大設備事故ゼロを目指していきます。
また、いわき事業所では、災害発生時の人身事故を含めた被害を最小限に抑制するため、製造部ごとの小規模訓練および夜間訓練などを計画的に実施し、緊急時の行動を反復習得することで保安防災能力の強化および緊急対応能力の向上を進めています。さらに、近年激甚化している自然災害に備えて、大雨や強風に対する運転基準の設定や設備の健全性の確認、飛来物への対応や従業員の安全確保などについて見直しを実施しています。
樹脂加工事業所においては、2022年度に発生した事故は3件(2021年度:9件)でした。例年は、ヒューマンエラーを起因とするフォークリフトによる事故が約75%(2021年度:7件、約78%)を占めていました。製造拠点である樹脂加工事業所は、安全・安定生産が求められており、生産活動を支えている場内物流の安全確保が必要不可欠です。そのため、2022年度は新たにフォークリフト運転者の分類・格付けとそれに応じたルールを設定し、4月から運用を開始しました。加えて、ヒューマンエラーを防止するための指差し呼称定着活動を推進したことで、2022年度のフォークリフトによる事故は1件(全体の約33%)と大きく減少させることができました。指差し呼称の定着と事故の原因究明力および安全対策の展開力を向上させ、類似事故の再発を防止していきます。

グループ全体での安全活動の推進

年2回開催している「クレハグループRC協議会」では、グループ各社の安全推進活動の事例や類似事故防止に向けた事故情報などを共有化し、グループ一丸となって安全活動を推進しています。