ポリフッ化ビニリデン(PVDF)KFポリマー
工業用途
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KFポリマーの加工温度はどのくらいですか?
KFポリマーのグレードや加工装置の仕様、溶融樹脂の滞留時間によっても異なりますが、シリンダー温度で200~240℃程度です。
樹脂温度が280℃以上になると分解しフッ化水素を発生します。 -
何度で分解しますか?
280℃以上に加熱しないでください。
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分解生成物は何ですか?
フッ化水素、一酸化炭素、フロロホスゲン等が発生します。
樹脂加工の際には念のため局所排気装置を設置してください。 -
成形機の材質は特殊なものが必要ですか?
スクリュー、バレル等の成形機の金属部分には特殊素材を使用する必要はありません。
硬質クロム等のメッキで完全に被覆されていることを確認してください。
長時間生産のためには、スクリュー、バレルおよびノズルの材質としてアルミニウム、チタン、ホウ素等 の軽金属が主成分のひとつとして含まれている合金は避けてください。軽金属系の合金を使用すると 樹脂が分解しやすくなります。また、分解に至らなくても金属と樹脂が離型しにくくなります。 -
加工の際、加工助剤や熱安定剤のような添加剤は必要ですか?
加工のために添加する添加物は不要です。
その他の目的で添加物(化学薬品、着色剤、補強剤等)を添加する際は、添加物の種類によって予想外の分解を誘発する危険性があります。
あらかじめ少量の混合試験を行い、安全性を十分ご確認ください。 -
着色はなぜおこるのですか?
温度条件により、主にポリマー末端部の構造変化がおきることで着色する化学構造になります。
分解に至らない条件で着色が発生した場合には、ポリマー主鎖の構造変化はほとんどありませんので、 通常、物性への影響はありません。 -
他のフッ素樹脂に比べて何が違うのですか?
ポリテトラフロロエチレン(PTFE)やパーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)は水素原子を持たない構造のため、全体的には極性が小さく分子間力が比較的小さな柔らかい樹脂となっています。
また撥水(疎水)性、非接着性や耐薬品性というようなフッ素樹脂特有の物性を発現します。
これに対しPVDFは分子間力が大きく結晶性であるためガラス転移点以上でも機械的特性が優れています。
またフッ素樹脂であるにもかかわらず接着が可能で、撥水性も示すというように、フッ素樹脂と汎用樹脂の中間的な物性を示します。 -
なぜ誘電率が高いのですか?
CH2とCF2が交互に規則正しく結合しているため分子鎖自身が大きな双極子モーメントを持っており、
かつガラス転移温度が低い(約-35℃)ため室温付近では分子鎖の運動性が高くなっているので大きな誘電率を示します。
電池用途
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KFポリマーのNMP溶剤への溶解方法
KFポリマーのNMP溶剤への溶解方法
①所定量のNMPを加熱可能な容器(ビーカーやフラスコ等)に入れる。
②常温のままNMPをマグネチックスターラーや一般的な撹拌機等で撹拌※する。
③撹拌下、所定量の粉体をダマ(凝集物)が出来ないように徐々に投入する。
※粉体の投入時、撹拌が弱いと粉体の大きな凝集物が出来やすいので、出来るだけ激しく撹拌する。投入後は、溶液の循環が良好な程度まで撹拌を緩めても構わない。
④溶液の樹脂濃度は、粘度※が高くなり過ぎないように設定する。
※比較的取り扱い易い溶液粘度:500~2,000mPa・s(攪拌機のトルクや容器からの移し替えに適当な範囲)
⑤粉体を全量投入した後、撹拌を続けながら加熱する。推奨温度は50℃。
⑥温度を保持したまま数時間、撹拌を続け、溶液中の固形物(浮遊物)が見えなくなり、溶液が透明になれば溶解完了とする。 -
水系バインダーとの違い
KFポリマー(懸濁重合PVDF)と水系バインダーは、溶解性・分散性・物性・用途適合性において本質的な違いがあります。
KFポリマーは正極と負極の両極に使用することができ、水系ポリマーは一般的に負極に使用されます。 -
NCMとLFPの推奨グレード
NCM用途には高分子量・高接着性のグレードであるW#9700、LFP用途には分散性・剥離強度・コストバランスに優れるホモポリマーが推奨されます。
一方で一般的な傾向として、分子量が大きいほどハンドリングが難しくなるため、初期検討としては分子量が低いホモポリマーを推奨いたします。 -
KFポリマーをNMPに溶解した際に着色してしまうが影響はないか
PVDFをNMPに溶解した際の着色は、通常レベルであれば電極製造プロセスや電池性能に実用上の影響はほぼありません。
ただし、着色が極端な場合や特殊な条件下ではゲル化や長期信頼性への影響が完全には否定できないため、着色度合いの監視と原料・工程管理が重要です。
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