前中期経営計画の経験を糧に次の成長へ
クレハはPVDF事業やPGA事業を成長ドライバーと位置付け、前中期経営計画では機能製品を中心とした成長を目指してまいりました。しかしながら、市場環境の変化や需要構造の変動により、当初計画との乖離が生じました。特に、EV市場の動向変化や地域ごとの電池技術の違い、さらに素材産業における中国企業との本格的な競争の始まりなど、外部環境の変化は想定以上に大きく、当社の事業ポートフォリオがこうした変化に対して必ずしも十分に強靭ではなかったという課題が明らかになりました。
こうした状況を踏まえ、当社は将来のリスクを先送りすることなく、資産の見直しを含めた構造改革を実行しました。この判断は短期的には痛みをともなうものでありながらも、中長期的な成長に向けた基盤を固めるための重要なステップであると考えています。
技術の収益化にこだわり、世界で勝ち抜く高付加価値企業
当社は、2026年度から、「2035年度長期経営計画」-Technology to Value(技術の進化を更なる価値へ)- と、「中期経営計画(2026年度~2028年度)」-Technology to Value 2028(技術を価値へ)- をスタートさせました。その中で、2035年度のありたい姿として、「技術の収益化にこだわり、世界で勝ち抜く高付加価値企業」を掲げています。
当社には、技術の力を高めて社会に貢献したいという強いDNAがあります。しかしながら、技術は単に存在するだけでは企業価値にはつながりません。市場において顧客に選ばれ、継続的に収益を生み出してこそ、社会への価値提供につながるものです。
この考えのもと、私は「技術の収益化にこだわる」ことを経営の中核に据え、すべての事業・組織において、技術を価値へ変換する取組みを加速してまいります。そのためには、全部門・全社員がビジネスパーソンマインド(商売人気質)を強く意識し、価値創造に向けた行動を徹底していくことが不可欠です。
事業ポートフォリオの再構築
前中期経営計画における最大の教訓は、特定の事業・技術・国への過度な依存がもたらす利益構造の脆弱性でした。
今後は、機能製品、樹脂製品、ライフサイエンス領域の3本柱による事業ポートフォリオへと進化させ、特定領域への依存を抑えつつ、安定的かつ持続的な収益基盤の構築を目指してまいります。
このポートフォリオ再構築は単なるリスク分散ではなく、不確実性の高い時代においても競争力を維持し、挑戦を続けるための積極的な経営戦略です。
人的資本経営のキーワード、「成長」「挑戦」「信頼」
私は、中長期的な企業価値の源泉は「人財」にあると考えています。
そのため、人的資本経営を経営の重要テーマと位置付け、社員一人ひとりが成長を実感し、挑戦できる環境の整備に取り組んでいます。
キーワードは「成長」「挑戦」「信頼」です。社員の成長が企業の成長につながり、その挑戦を支える組織風土、そして社内外の信頼関係こそが持続的な価値創造の基盤となります。心理的安全性の確保や人財育成の強化などを通じて、社員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進してまいります。
クレハが変化の激しい事業環境の中でも着実に成長し続ける会社であるために、私は「知恵」「情熱」「共創の心」をもつ社員とともに挑戦を続けていきます。
環境変化を成長の機会と捉え、主力事業の競争力強化、事業ポートフォリオの進化、経営基盤の強化を通じて、化学の力で人々の生活をより豊かにする新たな価値を創出し、社内外の皆様の期待に応えてまいります。
代表取締役社長 兼 CEO
名武 克泰