研究開発力と技術競争力の強化
クレハは、ビジョンとして「独自技術でスペシャリティを追求し、未来を拓く社会貢献企業」を掲げ、研究開発力と技術競争力の強化をマテリアリティとして新事業開発、新製品開発、プロセス開発力・生産能力強化を推進しています。
事業化と収益化を加速させる基盤の強化
- 高度専門人財・DX人財の選抜と育成による、技術開発やマーケティングの高度化
- イノベーションの創出基盤となる、技術プラットフォームの導入
- 生成AIを含むDX技術基盤導入による、開発環境の強化
研究・技術開発体制
前中計期間(2023~2025年度)において、当社は研究開発力の最大化と新規事業創出の実現に向けた組織改編を行い、既存事業に関する開発や基盤研究を行う研究開発本部とは別に新事業推進本部を新設しました。また当社の主要事業のひとつである PVDF(KF ポリマー)の技術課題解決の迅速化を図るべく KF 技術プロジェクトを設立しました。さらに生産技術および研究開発分野の基盤技術の向上、コンピューターサイエンスなどの最先端技術の導入を行うイノベーションテクノロジー部を設置しました。
2026年度からは研究開発本部では拠点別の研究所の枠組みを廃止し、機能別に農薬開発部、KF開発部、高分子開発部の3つの部を設置しました。生産・技術本部では技術部を設置し開発に専念できる環境づくりと柔軟なリソース配分で技術力の底上げと開発を加速しました。前述したKF技術プロジェクトは新グレードの開発や生産性向上に一定の目途が付いたことからプロジェクトを研究開発本部のKF開発部および生産・技術本部の技術部に移管しました。
取組み
主力事業の競争力強化に向けた開発
当社では、主力事業の競争力強化に向けて部門間で連携した取組みを進めてきています。ここでは重要テーマの中からリチウムイオン二次電池(LIB)用バインダー向けのKFポリマーとポリグリコール酸(PGA)の開発についてご紹介します。
LIB用バインダー: KFポリマー
近年の電気自動車向けLIB市場の急速な拡大を受け、当社は競争力あるバインダー製品の開発と最適な供給体制の構築を目的として、2023年11月に部門横断組織としてKF技術プロジェクトを発足しました。事業部門、研究開発部門および製造部門が密接に連携し、顧客への積極的な技術提案活動を通じた新材料の開発にも注力してきました。こうした取組みは着実に成果を上げています。2026年4月からは新たな組織体制のもと、技術マーケティング主導での開発・提案活動をより一層強化し、ユーザー企業様への新たな価値の提供に取り組んでいます。
PGAの開発
高強度と生分解性を両立したPGAの開発において、素材開発から高度な成形加工、そして最終製品のアセンブリにいたるまでを一貫して担う開発体制を確立しています。米国開発拠点が掘削現場の高度なニーズを直接捉える技術マーケティングを実践し、素材特性を熟知し独自の成形加工技術を有する日本の開発拠点へとフィードバックすることで市場適合性の高い製品を迅速に形にしています。加えて、成形加工の戦略的パートナー企業や外部研究機関との協業を推進し、製品競争力の強化と研究開発効率の飛躍的な向上を実現しました。素材から製品までをつなぐ独創的な技術ネットワークにより、変革の激しいエネルギー市場において高付加価値なソリューションを迅速に提供し続けます。
事業ポートフォリオの進化に向けた開発
「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」「情報通信」の分野における開発テーマについて、マーケットインの視点、他社技術の活用、グローバル展開を軸として取組みを行っています。
ライフサイエンス分野
農業用殺菌剤
麦類・コーン・果樹・蔬菜(そさい)などを対象とする、世界各国の農薬規制厳格化に対応した、安全性の高い農業用殺菌剤を開発しており、2030年ごろの上市を目指しています。
バイオスティミュラント
バイオスティミュラントは、植物の生理に作用することで収量増加に貢献する、農薬や肥料とは異なる新たな農業資材です。当社では、既存品では見られない特異な機構と作用を有するバイオスティミュラントを見いだし、実証に向けて日本・欧州・米国などの国々にて圃場(ほじょう)試験を実施しています。2027年度の上市を目指して、開発に取り組んでいます。
癒着防止フィルム
手術後の癒着を防止する目的で、癒着防止フィルムが用いられています。当社では、癒着防止性能・取り扱い性能の双方に優れた癒着防止フィルムの開発を行っており、2027年ごろの臨床試験の開始、2032年度の上市を目指しています。
環境・エネルギー分野
SiC繊維
SiC(炭化ケイ素)繊維を使用したセラミック複合材は、航空機エンジンの金属部品の代替として使用され、軽量化および高耐熱性を実現して燃費の向上に寄与します。他社既存品より高性能かつ高い価格競争力を実現するSiC繊維を開発しています。現在、いわき事業所で量産プロセスの開発に取り組んでおり、2031年度の商業化を目指しています。
情報通信分野
3Dタッチパネル
クレハが開発したPVDF製透明ピエゾフィルムと英国Cambridge Touch Technologies社の技術を組み合わせた“押す力”の検知が可能な3Dタッチパネルの開発を進めています。水中や手袋装着時でも操作が可能で“押す”というユーザーの意思がともなう動作を必要とするため、意図しない作動を防止できます。 2026年度の量産化技術確立を目指しています。
知的財産活動の強化
前中計期間(2023~2025年度)では、研究開発の方向性を明確にするとともに、マーケティング活動に基づく製品・技術のアプリケーション展開などを見据えた特許出願戦略を策定・実行しました。その結果、特許出願件数は、該当期間以前の2022 年度48 件に対し、2023 年度84 件、2024 年度91 件、2025年度70件と大幅に増加し、2027年度以降に上市を計画している新事業関連の開発テーマを中心に積極的な特許の確保を図りました。2026年度以降は、さらに各事業領域や開発テーマの課題に沿った取組みを推進し、技術の差別化と企業価値・収益の最大化につなげていきます。
人財育成
当社の研究開発において、優秀な人財の確保、情報収集能力の強化、外部研究機関との協創・協業、およびマーケティングと研究開発の一体化が課題となっています。それらを解決する研究開発体制の構築施策として、2024年度に東京研究所を開設しました。顧客・外部機関との活発なコミュニケーションを行いながら、研究開発を進めています。
研究・技術開発を主導し成果を導出する人財や新規テーマを創出する人財の早期育成を目指して、特許出願数や海外技術誌の投稿数など研究開発促進に必要な各種項目を整備し、成果能力要件を設定しました。今後、要件を達成した人財は年齢に関係なく早期抜擢を行っていきます。