生物多様性の保全

GRI 101-4, GRI 101-5

生物多様性の保全は、気候変動対応と並び持続可能な社会の確立に向けてその重要性が高まっており、気候変動対応と一体的に取り組むべき地球環境課題としての認識が広まっています。生物多様性は人間活動により過去50年間の種の絶滅や生態系サービスの劣化により損失しています。クレハグループは、事業活動における自然資本への依存と影響を把握し、生物多様性の保全・再生に向けた取組みを策定・推進していきます。

TNFD提言に沿った自然との依存・影響関係の把握

クレハグループでは、TNFD*が自然関連のリスク・機会の評価方法として推奨する「LEAPアプローチ」に沿って、評価作業を進めています。LEAPアプローチは、Locate(自然との接点の発見、評価・開示の優先地域の特定)、Evaluate(自然への依存・影響の評価)、Assess(自然関連のリスク・機会の評価)、Prepare(リスク・機会への対応と開示)の4つのフェーズから構成されます。
当社グループでは現在、事業規模が最も大きい化学製品事業を対象にLocateフェーズを実施しています。

  • * Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、自然関連財務情報開示タスクフォース。自然資本等に関するリスク管理と開示枠組みを構築するために2021年に設立された国際的組織

自然への依存・影響の把握

SASB RT-CH-140a.3

Locateフェーズでは、クレハグループと自然資本との関係を理解するため、ENCORE*を用いて自然への依存・影響を把握しました。ISIC分類(International Standard Industrial Classification、国際標準産業分類)を使用し、当社グループの化学製品事業が該当する業種(基礎化学品製造業、その他化学製品製造業)を選択しました。評価の結果、自然への依存関係については、「水供給」サービス、「土壌と堆積物の保持」サービス、「水質浄化」サービス、「洪水抑制」サービス、「暴風雨抑制」サービス、「水量調節」サービスへの依存が比較的大きい可能性があることを把握しました。自然への影響関係については、「水利用」「GHG」「非GHG大気汚染物質」「固形廃棄物」によって自然に影響を及ぼし、「土壌汚染・水質汚染物質」「騒音・光害」によって自然に極めて大きな影響を及ぼす可能性があることを把握しました。

  • * Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposureの略。自然資本分野の国際金融業界団体と国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCSC)などが共同で開発したオンラインツール。セクター・サブ産業・生産プロセスで絞り込み、自然に対する依存・影響の程度を、極めて低い、低い、中程度、高い、極めて高いの5段階で確認できる
ENCOREによる自然への依存と影響の分析結果
▶︎ 依存
供給サービス 調整サービス
水供給 土壌と
堆積物の保持
水質浄化 大気・生態系
による希釈
大気浄化 洪水抑制 騒音抑制 気候調節 暴風雨抑制 水量調節
基礎化学品
製造業
中程度 中程度 中程度 低い 極めて低い 中程度 極めて低い 低い 中程度 中程度
その他の
化学製品製造業
中程度 中程度 中程度 低い 極めて低い 中程度 極めて低い 低い 中程度 中程度
▶︎ 影響
水利用 土地利用 淡水利用 海域利用 GHG 非GHG
大気汚染物質
固形廃棄物 土壌汚染・
水質汚染物質
騒音・光害
基礎化学品
製造業
中程度 低い 該当なし 該当なし 中程度 中程度 中程度 極めて高い 極めて高い
その他の
化学製品製造業
中程度 低い 該当なし 該当なし 中程度 中程度 中程度 極めて高い 極めて高い

当社事業と自然との依存・影響関係の評価結果から、化学製品の製造・加工を行っている国内外の11拠点を評価・開示の優先地域としました。

水リスクの評価

GRI 303-1, SASB RT-CH-140a.3

優先地域における物理的水リスク(水ストレス*1および洪水リスク)を、水リスク分析ツール「Aqueduct*2」を用いて評価しました。水ストレスに関しては、当社の直接操業拠点において、「極めて高リスク」または「高リスク」に該当する拠点が存在しないことを確認しました。一方で、日本、アジア・オセアニアに位置する5つの直接操業拠点では「中から高リスク」に該当する水ストレスが認められました。これらの拠点では、水使用量の適切な管理や削減に向けた取組みを行っています。また、洪水リスクの評価では、北米、アジア・オセアニアに位置する2拠点においてリスクが高いことを確認しました。これらの拠点では、洪水が発生した際の対応を緊急時対応計画や手順書で定め、災害リスクの低減を図っています。

  • *1
    人間や生態系の淡水需要を満たす能力またはその不足。「水ストレス」は水不足だけでなく、水質・水へのアクセスなどを考慮した包括的で広義な概念
  • *2
    世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)が公開する世界の水リスクを緯度・経度から評価するツール。水リスクの大きさは、低、低~中、中~高、高、極めて高の5段階で評価
Aqueductによる地域別の物理的水リスクの分析結果
水ストレス 洪水リスク
低 低~中 中~高 高 極めて高 高
日本 4 3
北米 1 1
欧州
アジア・オセアニア 1 2 1
合計 1 5 5 0 0 2

監視指標・実績

Evaluateフェーズでは、当社にとってリスクとなり得る要因を抽出するために、ENCORE、Aqueductの分析結果だけでなく、自社の知見を加え、自然への依存・影響の大きさを捉えていきます。監視する指標は、TNFDの中核開示指標を参照し、以下に示すとおりとしました。

自然資本に関する指標
No. カテゴリー 指標 測定指標 単位 報告範囲 開示先 2024年実績 2025年実績
気候変動 GHG
排出量
Scope1 1,000 t-CO2 クレハ
グループ
ESGデータ集 380 361
Scope2
(ロケーション基準)
1,000 t-CO2 クレハ
グループ
ESGデータ集 63 68
Scope3の総排出量 1,000 t-CO2 クレハ ESGデータ集 406 404
C2.0 汚染/
汚染除去
土壌に放出された汚染物質 PRTR制度「第一種指定化学物質」土壌への総排出量 t クレハ
+国内
グループ
- 0 0
ダイオキシン類 mg-TEQ クレハ
+国内
グループ
- 0 0
C2.1 廃水の排出 総排水量 1,000 ㎥ クレハ
グループ
ESGデータ集 19,586 20,982
COD t クレハ
グループ
ESGデータ集 100 86
BOD t クレハ
グループ
ESGデータ集 34 27
窒素 t クレハ ESGデータ集 45 37
りん t クレハ ESGデータ集 11 8
PRTR制度「第一種指定化学物質」水域への総排出量 t クレハ
+国内
グループ
- 3 14
ダイオキシン類 mg-TEQ クレハ
+国内
グループ
- 2 2
C2.2 廃棄物の
発生と処理
廃棄物発生量
(非有害+有害)
1,000 t クレハ
グループ
ESGデータ集 80 66
リサイクル量 1,000 t クレハ
グループ
ESGデータ集 49 36
埋立処分量 1,000 t クレハ
グループ
ESGデータ集 24 24
廃棄物発生量のうち、特別管理産業廃棄物発生量 t クレハ
+国内
グループ
ESGデータ集 2,796 2,204
C2.4 非GHG大気汚染物質の合計 SOx t クレハ
グループ
ESGデータ集 20 40
NOx t クレハ
グループ
ESGデータ集 477 471
PRTR制度「第一種指定化学物質」大気への総排出量 t クレハ
+国内
グループ
- 31 27
ダイオキシン類 mg-TEQ クレハ
+国内
グループ
- 11 12
C3.0 資源の使用/
補充
水不足地域からの取水 総取水量 1,000 ㎥ クレハ
+国内
グループ
ESGデータ集 19,308 19,301
1,000 ㎥ アジア・
オセアニア
ESGデータ集 230 137
  • * 区分別(地表水、地下水、海水など)の取水量と排水量、 PRTR制度「第一種指定化学物質」の各化学物質の排出量はESGデータ集をご覧ください。

生物多様性保全への取組み

クレハグループは、事業活動が自然資本に及ぼす影響を低減し、生物多様性を保全するため、温室効果ガスや廃棄物の排出量削減、化学物質の管理などによる環境負荷低減の取組みを進めています。