気候変動
クレハグループは、気候変動問題を重要な課題のひとつと捉え、2050年度までのカーボンニュートラルの実現を目指して、自社の生産におけるCO2排出量削減および製品・技術を通じた世界のCO2排出削減の取り組みを推進します。
目標 / あるべき姿
- 温室効果ガス排出抑制とエネルギー使用合理化に継続的に取り組む。
2022年度計画
- エネルギー原単位の年平均1%以上の減少
2022年度報告・成果
- エネルギー原単位 前年度比 0.7%減少
- 設備改善や各種省エネ活動を推進
TCFD提言に基づく情報開示
クレハは2022年4月20日に、TCFD提言*への賛同を表明しました。
また、当社グループの主な事業を対象として、気候関連リスク・機会および対応策について、複数の気候シナリオを用いて定性的に分析・評価し、重要項目を特定し、その内容をTCFDが提言する情報開示フレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿ってまとめました。
今後も引き続き気候変動関連情報の開示を充実させ、カーボンニュートラルの実現に向けた対応を推進しながら、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
- * TCFD提言:TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスクおよび機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨しています。
気候変動の緩和に対する取り組み
世界各地で異常気象による大規模な自然災害が多発する中、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える「1.5℃目標」が、事実上、正式に世界の新たな目標として合意されました。この達成に向けて、2050年までに温室効果ガス(GHG:greenhouse gas)の排出量を実質ゼロにすることが求められています。企業は社会とともに、実質ゼロの実現に向けた経営戦略を立て、着実にマネジメントを実行していかなければなりません。
クレハグループは、「環境負荷低減への貢献」をマテリアリティのひとつと捉え、「クレハグループ新中長期経営計画『未来創造への挑戦』」のもと、中長期CO2排出削減目標を立て、生産技術の高度化による環境負荷低減を目指していきます。
クレハグループのCO2排出削減目標
- 2050年度にカーボンニュートラル*を目指す。
- 2030年度にエネルギー起源CO2排出量を2013年度比30%以上削減する。
- * カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすること。すなわち、排出量と吸収・除去量を差し引きゼロ(ネットゼロ)にすること。
この目標の達成に向け、いわき事業所の主力電源である石炭火力発電所の再生可能エネルギーへの転換や、それ以外の事業所やグループ会社における主力電源の再生可能エネルギー電力への切り替え、製造設備のさらなる省エネルギー化などによって、気候変動緩和に向けて社会とともにその責任を果たしていきます。
サプライチェーン全体のCO2排出量
企業活動による温室効果ガスの排出に関しては、①燃料や電力などの使用にともなう自社の直接排出(Scope1)、②他社から購入した電気、熱、蒸気などのエネルギー使用にともなう間接排出(Scope2)に加え、③Scope2以外の、原料調達から廃棄にいたるまでのサプライチェーンを通じた間接排出(Scope3)の管理も重要であり、開示の要請も高まっています。クレハにおいては、2017年度からScope3(一部のカテゴリ)も含めた報告を行っていますが、2021年度からは、Scope3の全カテゴリを対象とした算定結果の報告を開始しました。
サプライチェーン排出量におけるScope1、Scope2およびScope3のイメージ
出典:環境省 経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.4)」を改変
CO2排出量のScope別内訳(対象範囲:クレハ)
CO2排出量 | |||||
---|---|---|---|---|---|
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
Scope1 | 337 | 356 | 340 | 359 | 355 |
Scope2 | 42 | 30 | 31 | 31 | 38 |
Scope3* | ― | ― | ― | 457 | 490 |
- * 2021年度から算出しています。
エネルギー起源CO2排出量と削減の取り組み
クレハの状況
いわき事業所では、省エネ機器への更新を計画的に進めるなど、エネルギー削減計画を着実に実行に移すほか、エネルギー内部監査の結果を水平展開し、省エネを推進しています。2022年度は需要増にともなう一部製品の増産のため、前年度と比較してエネルギー使用量およびCO2排出量が増加しました。ただし効率的な生産を実施し、エネルギー原単位は前年度比で改善しています。
樹脂加工事業所においても、高効率機器への更新など省エネ対策を推進しエネルギー使用量が減少しました。
本社などその他の事業所においても、それぞれ節電、省エネ活動を推進しています。
その結果、クレハの2022年度のエネルギー起源CO2排出量は39.3万トンとなり、2013年度比7.8%削減の結果となりました。
なお、いわき事業所では、日本の再生可能エネルギー普及の方針に沿って敷地内に太陽光発電設備を設置し、毎年、約300MWhの発電量を地域に供給しています。
クレハグループの状況
当社グループは、米国、オランダ、中国、ベトナムなどに生産拠点を有しています。エネルギー政策は各国の事情により異なりますが、各生産拠点では、それぞれの国の施策に沿って使用電力を再生可能エネルギーに切り替えるなど、積極的に気候変動緩和策を推進しています。例えば、欧州に拠点を置くKREHALON B.V.では、すでに使用電力の100%を再生可能エネルギーで賄っています。また、中国に拠点を置く呉羽(上海)炭繊維材料有限公司も、積極的に太陽光発電の導入を進めています。
このような取り組みの結果、当社グループ全体の2022年度のエネルギー起源CO2排出量は絶対量で44.2万トンとなり、2013年度比5%削減の結果となりました。
これからも、中長期CO2削減目標やカーボンニュートラルプロジェクトでの活動をもとに、グループ一丸となって温室効果ガスの排出削減に努めるとともに、削減目標のさらなる引き上げを図りながら、気候変動の緩和に向けて社会的責任を果たしていきます。
エネルギー起源CO2排出量の推移(対象範囲:クレハグループ)
エネルギー起源CO2排出量 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
2013年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
クレハ | 426 | 362 | 376 | 363 | 379 | 393 |
国内グループ会社 | 21 | 22 | 23 | 21 | 20 | 22 |
海外グループ会社 | 18 | 30 | 28 | 28 | 30 | 26 |
合計 | 465 | 465 | 428 | 412 | 429 | 442 |
エネルギー使用量の推移(対象範囲:クレハグループ)
CO2排出量の推移(対象範囲:クレハグループ)
- * エネルギー起源CO2排出量および非エネルギー起源CO2排出量の合計値です。2013年は、2023年度に策定したクレハグループの中長期エネルギー起源CO2排出削減目標の基準年を表しています。
物流における気候変動緩和の取り組み
物流においても、当社製品の輸送を担うクレハ運輸と社内関係部署が協働して、エネルギー原単位*の年平均1%以上改善という目標達成に向け、さまざまな取り組みを行っています。
- 省エネ車両の採用、車両大型化
営業部門や輸送協力会社と共同で、省エネ車両への計画的な更新や車両大型化によるCO2排出削減および総輸送距離の短縮に継続して取り組んでいます。その中で、小名浜港からいわき事業所への原燃料輸送車両の更新・大型化が完了し、輸送効率の向上とCO2排出削減に大きく寄与しています。 - 鉄道・船での輸送によるモーダルシフト推進
長距離輸送では、すでに一部において環境負荷の低い鉄道・船を活用していますが、さらに活用範囲を広げられないかを検討しています。
そのほかには、物流業務や保管施設改革にも継続的に取り組んでおり、物流倉庫の最適配置や輸送効率化の面からも環境負荷軽減を推進しています。
こうした取り組みの結果、2022年度のエネルギー原単位は前年度比で改善し、CO2排出量についても前年度から減少しました。また、2018年度からの5年間平均原単位変化において、年平均1%以上改善という目標も達成しています。
- * クレハのエネルギー原単位指数(物流):2006年度改正省エネ法に基づき、この年度の当社の特定荷主としてのエネルギー原単位(エネルギー使用量/輸送重量)を100とした指数
物流におけるCO2排出量およびエネルギー原単位指数
地域のカーボンニュートラル宣言への賛同
福島県では2021年2月に、2050年までに脱炭素社会の実現を目指す「福島県2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これを受け、これまで自主的な地球温暖化対策を推進するために当社いわき事業所も参加してきた「福島議定書」は、「ふくしまゼロカーボン宣言」となりました。当社グループは、2050年度のカーボンニュートラルを目指して取り組んでいることから、いわき事業所もこの宣言の趣旨に賛同しています。
福島県いわき市では、2022年11月24日にいわき市脱炭素社会推進パートナーシップ会議を設立し、いわき市全体が⼀体となって2050年までに脱炭素社会を実現する想いと決意を市内外に表明するため、「いわき市カーボンニュートラル宣言」を行いました。いわき事業所もこの宣言の趣旨に賛同し、持続可能な社会を目指して、地球温暖化対策に積極的に取り組んでいます。