トップメッセージ

当社は、「人と自然を大切にします」、「常に変革を行い成長し続けます」、「価値ある商品を創出して、社会の発展に貢献します」を企業理念に掲げ、技術立社として、スペシャリティ・ケミカル分野において差別化された製品を開発し、社会におけるさまざまな課題の解決や人びとの健やかな生活に貢献する事業の拡大を通してエクセレント・カンパニーであることを目指しています。

2020年の年初から、私たちは過去に誰も経験したことのない新型コロナウイルス感染症拡大という危機に直面しています。世界各国政府はその感染拡大阻止と経済活動正常化に諸施策を講じながらワクチン供給を急ピッチで進めていますが、できる限り早く接種が行きわたり、一日も早く安心して生活できる環境が戻ってくることを祈っています。この状況下、クレハグループでは、従業員の健康確保と、これに基づいた企業活動の遅滞回避を運営上の最優先事項として、日々感染予防に努めています。

この新型コロナウイルス感染症拡大により、世の中の状況が急速に変容しています。国境を越える経済活動が著しく委縮する中、現在は、新型コロナウイルス感染症対応が最優先されているのが実情ですが、世界経済は総体的には今後緩やかな景気回復が期待されています。反面、政治の世界では、米中対立に代表されるように国際協調の機運に欠け、世界の自由貿易体制が揺らいでいます。一方、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの言葉に代表されるように、世界各国は地球環境を意識し、気候変動の防止や資源循環への取り組みを加速しています。また、今、直面しているコロナ禍後に想定される、新たな環境、ニューノーマル(新常態)に順応すべく、模索しています。

このような著しい社会環境変化の状況下にあっても、強く、柔軟に対応し、これからも社会に必要とされる企業であり続けるために、当社グループも常に変革を行い成長し続けなければなりません。現在、当社では経営が一体となって、当社グループのあるべき姿に向けた課題と方策について、改めて中長期的視点で議論を深めています。

1.「Kureha’s Challenge 2020」の総括

当社グループは2016年に策定した中期経営計画「Kureha’s Challenge 2018 ~クレハの挑戦2018(製品差別化と新事業創出)」 において未達となっていた重点施策完遂のため、中計オリジナルを2年間延長(ストレッチ)し、“PGA事業の拡大と利益創出”、“フッ化ビニリデン樹脂事業の更なる拡大”、“既存事業のビジネスモデル最適化”、“新規事業の国内外における探索と育成”、“経営基盤の強化”の5つの経営目標達成に向けて取り組んできました。しかしながらコロナ禍による内外経済の下振れの影響もあり、中計ストレッチの最終年度であった2020年度の業績は、フッ化ビニリデン樹脂事業、家庭用品事業、環境事業がけん引し、売上収益は前年度比で増加したものの、営業利益は若干減少となりました。PGA事業が再び営業損失となるなど、盤石な事業ポートフォリオの構築に向けて課題を残し、重点課題の多くは道半ばと受け止めています。

2.「Kureha’s Challenge 2022 ~クレハの挑戦2022」(中計ストレッチFinal stage)について

2年のストレッチ期間を設けたにもかかわらず、重点課題が未達成もしくは不十分であること、またコロナ禍の終息時期を含めた事業環境の先行きが未だ不透明であること、加えて、過去の中期経営計画において、要因分析の深掘りが十分ではないままに新たな中期計画を策定し未達成を繰り返した経営の反省も踏まえ、現ストレッチの未達成課題を「やり抜く」 ことが必須であり、強い意志を持ってこれに取り組む必要があると判断しました。
現中計ストレッチを2 年間再延長し(再ストレッチ)、既存重点課題への取り組みを「やり抜く」姿勢で完遂するとともに、当社グループの将来のありたい姿を想定した上で、次期中期経営計画の策定につなぐべく、新たな種蒔きとこれにともなう諸課題完遂を目指す2年間と位置付け「Kureha’s Challenge 2022 ~クレハの挑戦2022」(中計ストレッチ Final stage)を推進することとしました。また、新たな重要課題として、化学会社である当社は、自社および世界のカーボンニュートラルを実現するために、どのような技術を開発し社会に貢献するのか、また、その技術をどう利益創出につなげていくのかを方向付けし、これに取り組む覚悟でいます。

ESG経営の強化

「Kureha’s Challenge 2022」の経営目標、“経営基盤の強化”の重要施策として引き続き「ESG経営の強化」を掲げています。近年の経済環境や社会環境の変化は、想像を絶するスピードで進んでいます。当社グループが、これからも社会から必要とされ、持続的成長を遂げるには、その存在意義やあるべき姿を経済・社会・環境の観点から常に確認し、将来を見据えた諸施策の推進が欠かせません。中計再ストレッチの2年間は、特に、以下の取り組みに注力していきます。

(1) 環境、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーへの取り組み

世界規模で地球環境保全の取り組みが推進されている状況下、当社グループにとっても、これらの課題への対応は企業存続の必須条件です。昨年度、当社グループにおける2030年度までのCO2排出削減目標を策定し、その達成に向けた取り組みを開始したところですが、これをさらに加速させる目的で、2021年4月、専任組織「カーボンニュートラルコミッティ」を設置しました。2050年までのカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーへの対応を念頭に、グループ内の温室効果ガスや廃棄物の排出削減に留まらず、将来の事業化も見据えた技術開発テーマの選定と開発を加速し、社会課題の解決と当社グループの発展に寄与していきます。

(2) 安全、品質への取り組み

「安全操業、安心品質」は製造業を営む当社のCSRの根幹部分です。安全操業を維持し、社会が安心して求める商品を提供するというのが基本であり、そのベースがぐらついていては社会への貢献を発信しても受け入れられません。揺るぎない信頼のベースをさらに強固なものにしていくため、現状に満足することなく、当社として何をやるかということを常に具体的に洗い出して取り組んでいきます。

(3) 技術力の向上

技術立社を掲げる当社にとって、絶えず「技術力」の向上に努めることが、ひいては社会への貢献に寄与すると思っています。価値ある商品を社会へ提供し続けるため、特にプロセス開発力に磨きをかけ、革新プロセスの開発やコスト競争力、製品差別化の強化を図っていきます。その実現に向けて、プロセス開発からプラント設計までを担う「生産技術イノベーションセンター」を新設し、機動的な運営を開始しています。

(4) 人財の育成と風土改革

「将来のありたい姿」で実効を上げるには、「強い人財(現場力)の育成」と、この人財を核にした風土改革が不可欠です。これらを成し遂げるため2021年10月から「新人事制度」を導入します。現中計の期間中、全社を挙げて新人事制度の浸透に注力し、主体的・自律的に役割を果たし失敗を恐れずチャレンジする人財の育成、事業環境の変化に迅速に対応し得る企業風土を実現させ、当社の持続的な成長に結びつけていきます。

(5) デジタル化の推進

当社グループの競争力強化、少子高齢化による人財不足、そしてコロナ禍で加速化が想定される「ニューノーマル」や「働き方改革」への対応のためにも、デジタル化を加速しなければなりません。 現在、デジタル人財の育成・強化と同時に、部門ごとにデジタル化の具体的実例を積み重ねており、また、バリューチェーンでのデータ活用を想定したモデルケースの構築を進めています。

現中計課題の完遂だけでは、当社グループの持続的成長と社会への貢献の実現にはまだまだ不十分です。当社が将来にわたって、利益創出をはじめとする経済的価値の向上とあわせ、あらゆるステークホルダーにとって欠かすことのできない存在、すなわちサステナブル(持続可能)な企業になるためには、従業員一人ひとりが常に“パッション(情熱)”、“スピード”、“コミットメント(約束)”の意識を持って新たなる変革に果敢にチャレンジしていかなければなりません。私も、クレハグループの先頭に立って行動していきます。今後とも、一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2021年8月

代表取締役社長

小林 豊